水曜日, 12月 23, 2009

デジタルカメラで負うリスク

ライティングのトレンドはあるもので、時代はめぐるものだ。


10年前はとにかく便利だとバンク全盛だった。ちょうど、Nikon D1が登場したころで、手の出る値段のデジタルカメラが登場したころだ。それまで大手印刷会社で使ってきた、KODAK DCS460cから比べると画期的に使えるカメラであり、色空間がNTSCと、ビデオからの影響さえのぞけばデジタルカメラ普通に使えるじゃないかと思うに十分な作りだった。

今になって考えれば、私にとってのバンク全盛、いわばできるだけフラットなライティングはNikon D1のコントラストがポジフィルムより圧倒気に高い。いや、ハイライトは飛びやすく、シャドーは潰れやすいというレンジの狭さを克服する方法であったようだ。できるだけ物に近づけて、バンク一灯でフラットにライティングをする。これであれば、D1でも問題なく印刷データを作成できた。外で使うと危険なくらいにレンジの狭いD1もパンクの下では正しい色を再現し、もののディテールをきちんと表現してくれた。

それまで、4×5であたりまえ、ブローニーを使うにも、4×5にアタッチメントで来たものにとって、D1は意識改革が必要な進化だった。効率化するためにデジタルを使う、まだまだパソコンのCPUパワーも不足している。ハードディスクの価格も高い。CFカードの容量も数メガしかない。なによりバッテリーの消費はベラボウで、数本のバッテリーを持ち歩かないと使い物にならない。かなり苦労をしないと使えないのに、直感的にデジタルカメラは使えると思っていた。
それは、ポジフィルムと比較して苦労をするのであり、それ以前のデジタルカメラDCS460cあたりから比べれば画期的に使えたからだ。
D1による意識改革はフォトグラファーとして生き方すら変えてしまうものだった。今まで手を加えられるのは撮影までで、現像に出して、ポジをチェックすればあとは印刷物があがってくるまでフォトグラファーの出番はない。
本来色校という段階で撮影者にも確認をして欲しいものだが、デザイナーがチェックするだけで、撮影者にまで確認をとってくれることはまずない。
撮ったら、あとは印刷会社におまかせするしかなかったのだ。
デジタルカメラのよかったこと、なにより撮影者が色まで対応できるようになったこと。それは、バンクで、フラットに仕上げなければならないという制約以上にフォトグラファーに自由を与えてくれた。
NTSCから、RGBへの変換、RGBから、印刷用CMYKへの変換、その土俵になる色空間、使いこなすにはカラープロファイルが命であり、カラーマネージメントは楽しい作業だったのだ。
2003年には、広告基準カラー(JMPA)を作るためベンダーキットを作る手伝いをさせて頂いたり、なんだかデジタルカメラは私にとってカラーマネージメントを学ぶ土俵だった。
色は撮影したフォトグラファーが管理すべきものであり、この基準をきちんと守る、色の保証をするという作業はフォトグラファーがリスクを負ってやるべき作業だと考えている。でなければなんのためのプロなんだ。カメラの進歩で写っているは当たり前なんだ。ちゃんと色を表現するためにライティングから管理、コントロールするからプロなんだよ。

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